石巻市で迎えた朝は5時30分に目が覚めた。
狭いワゴンRの中で凍えていた。
トイレに行き顔を洗い髭を剃った。
駐車場横のローソンでおにぎりとお茶を買って、狭いワゴンRの中で食べた。
一服して歯を磨き、6時丁度にローソンの横のガソリンスタンドで満タンにする。
いよいよ海岸線を走りにいく。
小学校。そう言えばここのすぐ近くで小学生達がバス待ちしてた。
きっとここに通えなくなって他の学校に通っているんだろう。
笑顔でバスを待っていた彼らの同級生達はみな無事だったろうか、と思うと
辛くなった。
ここから少し進んで昆布漁をしている俺と同じくらいの年齢と思われる漁師に合った。
簡単な自己紹介をして聴いてみた。
「この辺の見所は?」
彼は言った。
「そうだなぁ、、。みんな流されちまったからなぁ、、、。」
上品の郷の売店のお兄ちゃんやお姉ちゃん。石巻市の町役場の人達と同じように聴いた
俺がバカだった。
彼らはどんな形であれ客商売。遠方からの客も隣に住む顔なじみも来ればありがとうご
ざいますという。しかも笑顔で。
漁師の彼は違う。
「俺達は当事者だ」というオーラが全身から出ている。
暫くの沈黙の後、「神割、行ってみな。神割岬。」とだけ教えてくれた。
丁寧にお礼を述べ、自分のあさはかさを恨みながら向かった。
神割岬は10分程移動したところにあった。ここでも桜の花びらが舞っている。
岬に降りていく途中、地震による地盤沈下で足下に注意するようにとの看板。
大きな岩が裂け、波がそこから打ち寄せる。目を凝らすとその先に水平線が見えた。
俺の旅は始まったばかりだけど、これで終わったと悟った。