12年前に、俺は1度死んでいる。
岐阜県の川原にあるキャンプ場で、川向こうまでロープを張りに泳ぐ仕事を貰った。
キャンプに訪れる子ども達は、そのロープを伝っていけば対岸に行けるという仕組み。
川幅は約25m。
当然浮き輪の類いは使えない。流されてとても対岸に行けないから。
俺は中学生のプールを最後に10年以上ぶりに泳ぐ事になりドキドキしていた。
それでも、いける自信はあったしTシャツも着たまま川に入った。
甘かった。
川の中間を過ぎると、湾曲しているせいか深く足は着かないし、流れは早くなる一方だった。
水を掻いても掻いても進まずに、どんどん体力は減っていく。
それでも対岸まで後3mまできた。おかしい、視界は水中だ。息をしなくちゃ。
だめだ、水が口に一杯だ。水の音がガーガー鳴ってる。
そんな時、「お兄、手出して!」って聴こえた。
上下が解らないながらも手を伸ばすと、誰かが俺の手をつかんで引き上げた。
対岸で魚釣りをしていた人だった。
岸に上がると俺が目指してた対岸から随分川下に流されてた。
今年は海水浴客が減っているらしい。
川遊びに行こうとしているなら充分ご注意を。
と、言いながら、川で子どもを遊ばせてきた。ま、深さは膝までしか無いとこね。